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CYNHN、女子流、フィロのス、リリスク、STU48……『アイドル楽曲大賞2022』体制変更や時流を追い風にできたグループが上位に

CYNHN、女子流、フィロのス、リリスク、STU48……『アイドル楽曲大賞2022』体制変更や時流を追い風にできたグループが上位に

アイドルが1年間に発表した曲を順位付けして楽しもうという催し『アイドル楽曲大賞』。11回目となる2022年度の『アイドル楽曲大賞』メジャーアイドル楽曲部門では、2020年のランキングで2位を記録し、一定の評価を得てきたCYNHNが「キリグニア」で1位を獲得。2位にはR&B/ファンク路線へ回帰した東京女子流「Viva La 恋心」、さらにtofubeats提供曲で新たな一面を見せたフィロソフィーのダンス「フィロソフィア」のほか、lyrical school、STU48、=LOVE、超ときめき♡宣伝部といった面々が上位にランクインした。

リアルサウンドでは今回も『アイドル楽曲大賞アフタートーク』と題した座談会を開き、ライターとして企画・編集・選盤した書籍『アイドル楽曲ディスクガイド』を著書に持つイベント主宰のピロスエ氏、コメンテーター登壇者からはアイドル専門ライターであり、『VIDEOTHINK』制作・運営に携わる岡島紳士氏、著書に『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』を持つ音楽評論家の宗像明将、日本各地を飛び回るDD(誰でも大好き)ヲタの中でも突出した活動が目立つガリバー氏に参加してもらった。

なお、今年のアフタートークでは、ランキング10位までのアイドルをメインに扱い、東京女子流やフィロソフィーのダンス、私立恵比寿中学といった20位以内に同じアイドルが複数ランクインしている場合は、それらの楽曲にも言及している。ラストには11位から20位までの気になる楽曲をピックアップ。後編のインディーズアイドル楽曲部門では、LE SSERAFIM、IVE、NewJeansといったグローバルな活躍を見せるK-POPグループについてもトークが展開していく。(渡辺彰浩)※本取材は2023年1月19日に実施。

1位 CYNHN「キリグニア」

宗像明将(以下、宗像):CYNHNは今まで『アイドル楽曲大賞』の上位にはいたんですけど、今回ついに1位を取ったんですね。それはフィロソフィーのダンスや東京女子流の票が割れたこともあるとは思いますけど、CYNHNには去年、広瀬みのりさんという新メンバーが入りました。そのお披露目ライブに行ったんですけど、とにかく歌がいいんです。ほかのメンバーとのバランスが良くて、ボーカルグループとしての魅力がさらに増したと感じています。『アイドル楽曲大賞』のベスト10を見ると、ソウル/ファンクの要素が多く、「キリグニア」もファンキーなベースラインだったりするんですけど、歌ものとしての魅力に振り切った楽曲が1位を取ったというのは象徴的だと思いました。

ピロスエ:CYNHNは、前々回の2020年が「水生」で2位だったんですよね。以前から一定の評価はあったグループです。サウンド面でも骨太でかっこいいと思うんですけど、特に耳に入ってくる歌詞が印象的です。サビの直前で〈燃えるゴミ〉というアイドル楽曲にはあまり使わないフレーズでギョッとさせたりだとか、〈あぁしたい未来、肥大比例して色味を〉というサビでの韻の踏み方もいい感じだし、歌詞に気合いが入っていると思いましたね。

岡島紳士(以下、岡島):メインソングライターとして楽曲を担当しているのは、ClariSやLiSAといったアーティストにも提供している渡辺翔さんで、グループの所属事務所はディアステージです。

ーーグループとしては、2022年はどんな活動状況だったんですか?

宗像:5月にZepp DiverCity(TOKYO)でのワンマンライブがあったんですね。休養していた百瀬怜さんが復帰してから開催までそこまで期間もなかったんですけど、最終的にソールドアウトしているんです。メンバーの活動休止があれば、そのまま卒業、脱退していくメンバーもいる。激しい波を泳ぐ中で、その後の6月には広瀬さんがボーカリストオーディションで選ばれ、グループに加入した。CYNHNに対するシーンの期待の大きさを感じます。

ガリバー:広瀬さんは、元々フルポケ(Fullfull Pocket)のメンバーで、その前には強セン(強がりセンセーション)にもいたんですよね。グループを転々としているアイドルが即戦力として入ってくる。歌唱力で戦ってきた広瀬さんによって、ボーカルに厚みが増した楽曲が、より強い説得力をもって今回評価されている背景はあるんじゃないかと思っています。言ってしまえば、フルポケの後にCYNHNに入るっていうのは変わった遷移なんですけど、結果そこで培われたボーカル力がハマったのは面白い動きだなと思って見ています。それが『アイドル楽曲大賞』で最高2位だったグループを1位に押し上げる勢いになっているのであれば、希望的な話だと思うんですよね。

岡島:一部の女性アイドルでは、すでに一定のフォロワー数のいるメンバーを積極的に採用する動きがあります。応募要項にそういったことが書いてあることもあります。従来のアイドルの成り上がりメソッドである「ライブの動員力を上げて行くこと」がコロナ禍に入ってからほとんど成り立たなくなっているので、最初からSNSでの影響力のあるメンバーを入れることでスタートダッシュに勢いをつけたいと考えるのは普通かなと。

宗像:でも、CYNHNのメンバーは自分のフォロワーというより、グループの公式アカウントのフォロワーが増えればいいというようなスタイルに感じられます。CYNHNはボーカルグループであるということは常に言ってきていたんですよ。ボーカルを強めていくことへの意識と楽曲とのシナジーで、最終的に勝ち抜いた1位なのかなと思います。

2位 東京女子流「Viva La 恋心」

14位 東京女子流「コーナーカット・メモリーズ」

宗像:女子流がソウル/ファンクに明確に回帰した傾向があって、その中でも「Viva La 恋心」は繊細なボーカル。女子流が女子流たるのは歌であると。CYNHNも歌であったわけですけど、こちらも歌で聴かせる女子流、そしてみんなが聴きたかった女子流が帰ってきた。「Viva La 恋心」は大人になった女子流の繊細さが人の心を掴んだんじゃないかと思います。

岡島:作詞・作曲・編曲は、きなみうみさんという24歳の方で、最初期に松井寛さんの楽曲によりイメージづけられた“ブラックミュージックの女子流”に繋げていっている印象です。

ーー公式には「淡く切ないラブストーリーをアーバンなAORサウンドに載せた1曲」ということです。

宗像:そういったところを強く押し出さない流れも女子流にはあったわけですよね。2021年辺りからは女子流ってなんだろうってことを本人たちが考えて、ディレクターの方もその年は『アイドル楽曲大賞』を目指していたと言っていました。その結果、AORを若手の作家に書いてもらうというのが一つのアイデアとして出てきたことだと思うんですよね。

ガリバー:メンバーの意見を取り入れていろんな楽曲をやってきたけど、結局は原点回帰なんですよね。「Viva La 恋心」なんかはサウンドに関しても分かりやすくアップデートされていて、なおかつ『TIF』(『TOKYO IDOL FESTIVAL』)で昔の楽曲と続けて聴いた時にも綺麗に繋がるんですよ。みんなが聴きたかった女子流がアップデートされて、メンバーも成長した形で、この10年以上の時を経てようやく帰ってきたというのがランキングにも反映されている。「Viva La 恋心」が上位にきたということも、彼女たちの魅力が一番伝わるフォーマットがこういうことなんだということを伝えている気がして、この路線を見失わずに今後もアップデートしていってほしいと思いますね。

岡島:女子流には「鼓動の秘密」や「深海」を手がけた松井寛さんのイメージが強くあると思いますけど、そこをうまく引き継ぐような若手を見つけた感じがします。

ガリバー:曲の評価もそうだし、ここまで4人で残ってくれてよかったという気持ちが大きいです。『アイドル楽曲大賞』的にも10年以上の時を経て再び上位に上がってきたことは頼もしい限りですね。

岡島:そういった声質のメンバーが集まってるんですよね。「Viva La 恋心」のような曲が女子流には一番合う気がしています。

3位 フィロソフィーのダンス「フィロソフィア」

9位 フィロソフィーのダンス「愛の哲学」

13位 フィロソフィーのダンス「ウォータープルーフ・ナイト」

宗像:「フィロソフィア」はtofubeatsが提供したソウル/ファンク/ディスコの新鮮なビートに、おとはす(十束おとは)の卒業が重なった、かけ算だと感じています。「愛の哲学」はディスコで、これも女子流と同じ、みんなが聴きたかったフィロソフィーのダンス。そういったニーズに対して直球で作れたのが大きいと思いますね。「フィロソフィア」も「愛の哲学」も“ベストフォー”が終わっていく、そこに対するノスタルジー、思いを重ねる人がこの2曲を押し上げたんだと感じます。歌に関しては言うまでもないグループですし、妥当なランクインですよね。

ガリバー:20位内に新譜の3曲が入っていて、それぞれ際立っていますけど、近年ではメジャーデビュー後にそうではなかった時もあったと感じています。そこに対して2022年は充実した1年だったんだろうなと思いますが、おとはすの卒業の影響なのか、それとも制作体制が変わったりもあったんですか?

宗像:おとはすの卒業は大きいと思いますし、体制的にも、女子流と同じでソウル/ファンク風味を再び強めたところが大きいんだと思います。停滞するのではなく、グループの魅力を見つめ直して、また新しい方向に舵を切っていったのが大きかったんでしょうね。

ガリバー:わりと早い段階で軌道修正ができたと。

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