山形発の女性アイドルグループ「anew（あにぅー）」が今冬、デビューした。「都会の色に染まらない唯一無二」のアイドルを目指し、県内を拠点に活動している。
「全国だけじゃなくて世界まで行けるアイドルを目指しているので、よろしくお願いします！」
昨年末に山形市内で開かれたanewのお披露目ライブ。約100人の観客を前に、メンバーのりこさん、まいみさん、あまねさん、ここなさんの4人が宣言した。
地元企業のブランディングを手がける同市の会社「Brand new day」が、「山形から都会に勝てるアイドル」とのコンセプトで昨年6月にメンバーを募った。昨年12月1日、アルバムを発売し、デビューした。メンバーや制作スタッフらは全員、県内在住だ。
楽曲は、穏やかでポップな曲調ながら、誹謗（ひぼう）中傷への怒りなど社会的なメッセージも込められた歌詞が特徴だ。デビューアルバム「世界ヲ染めていく」に収録された「雪の惑星」は、東北最後のキャバレーだった「白ばら」（山形県酒田市）で、「ソコとココ」は山形市七日町の飲食店など5店舗で、それぞれ音楽ビデオを撮影したという。
デビューした昨年末には、大手音楽配信サービスの邦楽アルバムチャートで英国1位を獲得した。順位のアルゴリズムは公開されておらず、詳しい理由は分かっていないが、プロデューサーの安部誠司さんは「実感はないが、英国でもファンができたのなら、うれしい」と振り返る。YouTubeにあげた楽曲には、英語やスペイン語によるコメントも寄せられている。
国内でも、拠点を置く山形で昨年12～2月に3回行ったライブには延べ500人ほどが来場し、満席だった。訪れた県内在住の男性（38）は「山形発なので、他のアイドルよりも身近に感じる。ライブのパフォーマンスも完成度が高く、ますます『推したい！』と感じた」と語る。
多くのアイドルが大都市で活動する中、なぜ山形を拠点とするのか。
安部さんは、情報過多の社会では「アイドル活動が珍しく、情報が少ない環境」が逆に強みになると考えているという。「『雑音』が少ない分、他の色に染まらず、自分たちの目指すアイドル像を貫くことができる」と話す。
メンバーの一人、まいみさんは大学に通いながら活動をしている。「上京はハードルが高い。普段の生活を大切にしつつ、私たちの等身大のカラーを出していきたい」。りこさんは「ライブなど色々な場所で応援してもらえることが増え、うれしい気持ちでいっぱい。これからも、もっと知ってもらえるよう頑張りたい」と話す。
3月には東京都内で計3回、ライブステージに立つ予定だ。夏にかけて海外フェスへの参加も決まっており、クラウドファンディングでの遠征資金の調達を計画している。（小川尭洋）
